チームの良さを確認するためにやったこと
この記事はProduct Manager Advent Calendar 2016の7日目の記事として書かれました。6日目の記事はgackyさんのおじさん Product Manager サバイバルガイドでした。
はじめまして。GMOペパボ株式会社でディレクターとして働いています。@jitsuzon です。弊社ペパボには「プロダクトマネージャー」という名称の職位や役職は存在しないため、自称プロダクトマネージャーとして、サービスのあれやこれやに関わっています。自称に至った経緯はこちらのスライドをご参考ください。
いきなりですが、みなさんのチームは「良いチーム」でしょうか?どこが良いのでしょう?どのくらい良いのでしょう?
この記事では、それをアンケートを用いて定量的に確認する方法について実践を元にお伝えしていきます。最近話題にのぼってくることも多い「心理的安全性」なんかも登場します。
背景
私は所属するチームに対して非常に満足感を感じていて、他のメンバーとチームについて話していても「今の状況はすごく良いよね」となることが多いです。ですが、先ほどと同じ問いが私の頭にふと浮かびました。「良い」と漠然とわかっているけど、言葉や数字で表したことはなかった。
もしこれが測れ、客観的にわかるものであったら、チームの健康診断がしやすいし、処方箋も出せる。また、自分のチームの良いところを自認して、さらに強みを高めることができる。良いところを他のチームに輸出することもできるでしょう。
手探りながらやってみようと思いました。
まず理想のチームとはなんだろう?
アンケートをしようかなと思っていたものの、いきなり設問をつくることはできません。まず前提となる理想や知識を整理することからはじめました。
良いチームを定義する
参考文献や経験などから自分で決めました。自身がマネジメントするチームの目標というイメージです。
- 自律的な行動(適切な行動ができる)
- 自律的な学習(常に能力を高めることができる)
- 変化に柔軟に対応できる(環境に適応しやすい)
- 十分な裁量(行動の幅が広い)
- 持続性が高い(拡大できる、いっときで終わらない)
理想には前提がある
いきなり飛び級で理想の状態にはいけません。少なくとも前提が存在します。
- 心理的安全
- 信頼
- 定義されたゴール
これらは特に、Googleのre:Workのこちらの記事を参考にしています。
上記の図がこのあとのベースになっています。心理的安全性が最も基礎的なものであり、下に行くほど上位なものになっていき、一番下は「仕事の影響の大きさ」となります。その他の参考文献は記事の一番下にまとめています。
アンケートを作成する
実際に計っていくために、アンケートを作成しました。使用したのはGoogleフォームです(なんでもいいと思います)。カテゴリ毎に設問を準備し、スコアを出せるよう5段階評価をします。
カテゴリ
先ほどのre:Workの図やその他の参考物、自分が考える理想の状況を組み合わせて以下のようにわけました。
- 心理的安全
- 不安なく仕事できるか
- リスクをとることができるか
- 弱さを見せられるか
- 信頼性
- 相手のことを信頼できるか
- ちゃんと仕事をやってくれるか
- 尊敬されていると感じるか
- ゴールや役割の明確さ
- やるべきことがわかっているか
- チームの構造がわかっているか
- 情報や仕組みの透明性はあるか
- 責任・裁量
- 仕事を行う上で十分な裁量があるか
- やりがいを感じる仕事であるか
- 適度な責任感を持って仕事をできているか
- 学習
- 知識やノウハウが組織に蓄積されているか
- 学習に対する前向きな姿勢があるか
- 省察がきちんと行われているか
- 仕事の意義・影響
- 仕事が楽しいか
- 自分の仕事が誰を幸せにするかわかっているか
- 仕事を通じて自己実現や成長ができているか
学習というのが自律的な発展において重要な要素だと思っており、それを入れ込んでいます。
設問
先ほどのものはカテゴリであり、実際の設問は以下です。カテゴリをさらに分解して設問として落とし込んでいきました。
1. 心理的安全
- チームのメンバーとコミュニケーションが取りやすい
- 自分が失敗しても周りに伝えることができる
- たとえ相手と異なっていても自分の意見を伝えることは難しくない
- チームのメンバーから意見が異なっているという理由で人格的に否定されることはない
- ときにはリスクをとる選択もできる
- 助けてほしいときにお願いすることができる
- わざと足を引っ張るような行為をする人はいない
- このチームではあなたのスキルや才能が発揮できている
2. 信頼性
- チームのメンバーは信頼できる
- 自分はチームのメンバーから信頼されていると感じる
- チームメンバーから謙虚さを感じる
- チームの他メンバーは尊敬できる
- チームのメンバーは適切に仕事を完遂してくれる
- このチームなら困難な課題でも乗り越えることができると思う
3. ゴールや役割の明確さ
- 自分はチームがどういう目標を達成すべきか理解している
- 自分はチームがどういう価値をお客さま(社会)に提供すべきかを理解している
- チームの目標と自分個人の目標が連携していると思う
- 何か仕事をするときに目的を意識できている
- チームの中で自分は何をすべきかを理解している
- だいたいどのような仕事でもどういうプロセスで進めるかがイメージできる
- 仕事を進める上で必要な情報は隠されていない
- チームの構成やメンバーの職種を把握している
- チームメンバーがどのような仕事をしているかがわかる
4. 責任・裁量
- 今の仕事にやりがいを感じている
- やっている仕事の責任は大きいと思う
- 目標・目的を達成する際にはたくさんの手段から選択できる
- 仕事を進める上で適切な裁量が与えられていると感じる
5. 学習
- 仕事の結果やノウハウはチームで共有されている
- 必要であれば積極的に勉強をする
- 自分やチームの仕事についてふりかえる機会が十分にある
6. 仕事の意義・影響
- 今の仕事は楽しい
- 仕事で自分が成長していると感じる
- 仕事で誰かを幸せにしている実感がある
- 自分の仕事がどれくらいサービスに影響しているか把握している
7. 良いところの確認:わたしたちは何を大事にするのか
- チームの良いところを10個挙げてください。
各カテゴリで設問数をある程度揃えたかったのですがバラバラになってしまいました。少なくとも3個以上はないとスコア出すときに平均値がブレてしまうでしょう。心理的安全性を確認する質問については、同じくre:Workですがこのページが参考になります。
回答
以下の5段階。スコアを出すために点数をつけます。スコアの付け方や適切な設問数、評価に十分なサンプル数については私自身よくわかっていないので、有識者さまお待ちしております。
- とてもそう思う(5点)
- そう思う(4点)
- どちらでもない(3点)
- そう思わない(2点)
- まったくそう思わない(1点)
これらを無記名投票で集めます。回答には10分もあれば十分です。
結果
これを私が所属している10名のチームで行いました。結果はこんな感じ。
上で挙げた設問数と異なるのは改訂がこの後にあったからです。
わかること
心理的安全性や信頼性といったものは高く、チームとしての基礎体力の高さがうかがえます。反対に低いのは「仕事の意義・影響」で、まだそこが十分に高いというほどではなかったようです。今後の課題ですね。
ただ、これはあくまで同一チーム内でのカテゴリの比較です。もっと正確に状況を把握するには、他チームと比較してどうか、同じチームの3ヶ月前と比較してどうか、など対照が必要です。
実は弊社内でもまだ私のチームしか実施していないので他チームの結果待ちです。みなさんのチームでもご実施されたら共有していただけると嬉しいです。もし自分のチームが低かったらと思うと恐怖ではありますが。
これから
学習支援の仕組みづくりなど次への施策や、良いところを下がりにくい状況にすることを取り組んでいきます。後者に関してはすでにアクションを進めています。
設問の最後に「チームの良いところを10個挙げてください」というものがありました。それは、チームの良さを明文化して行動指針とするためです。会社でいう理念やミッションにあたります。チームが大切にすることを決めることで、良いところが認識されやすく風化して良さが損なわれるのを防ぐことができます。それの決定にまつわるあれこれについてもまた書きたいと思っています。
さいごに
チームの良いところと課題は、チームの数だけあるでしょう。今回の方法ではそれを見つける手助けになればいいなと思っています。無闇に探すよりも、いくぶん楽になるはずです。改良案などありましたらコメントいただけますと幸いです。
みなさま、良きチームを!
私が所属するGMOペパボのグーペでは、新しいメンバーを募集しています。ご興味ある方はぜひ一度お話しましょう〜!
そして、来週13日(火)に弊社でウェブディレクター向け(といってもウェブサービス関わる方なら誰でも歓迎)のイベントを行います。こちらもぜひに。お待ちしております。私は司会をします。
参考記事・書籍
re:Work - Guide: Understand team effectiveness
Product Team Management // Speaker Deck