東京

週末ロックフェスに行った。

そこでくるりが「東京」を演った。

 

込み上げた。感情が混んで何の感情で泣いているのかがわからなかった。演奏が終わった後、横に居た女性も涙を流しているのがわかった。速やかに拭っていた。ただそれだけだけど。

 

大阪から東京に来てもうすぐ1年経つ。まだ慣れたり慣れなかったりしている。

 

東京に来てとても嘘をついた。ちっちゃい嘘を日に何個も重ねている。職場で電話がかかってきたら「折り返しで」といって上司に話し続ける。めんどくさい対応があったら「社内ルールで無理なんで」といって断る。こんな小規模な嘘をついて、自己保身に精一杯。みんながみんな、仕事では利害を押し付けあってきて、結構心が爛れていく。こんな瞬間を繰り返すことで「大人には色々あるんだよ」とか垂れるのであればクソだと思う。

 

ぼくはよく嘘をつく子供だった。口が達者で、屁理屈を言い、知ったかぶりをする。その上めんどくさがりなのでしょっちゅう言い訳をでっち上げていた。歳を重ねるごとにそんな薄っぺらい見栄を抱えて生きてもしょうがないと気付き、なるべく飾らず誠実に生きようと心がけていた。それがこの有り様である。

なんでまた大人になってまでこんな嘘をつかねばならないんだ。誠実より利益が優先される、営利企業というのはこんなに精神を蔑ろにするのか。あと面白いと思ってかすぐ服を脱がそうとする先輩死ね。低俗の極みが。文脈上関係無いが死ね。せめて遠くに行け。

 

最近幸福とは何か、自分は何に幸福を感じるのか、ということを考えていた。

もっと自分のことを考えてあげないといけないなと思う。殊自分に興味が無く、頑張る気が今まで起きず。幼少期の頃にあった自己愛を思春期にめっちゃ否定したからだと思う。その代わり他人のためとなるとすごく頑張れる、喜びも感じる。でもやっぱり孤独な人間として自己精神の高まりを求めていくべきなのではないかと思い至り。自分を幸福にしてあげなきゃいけないなと思い及び。

これに共感してくれるひとがいた。その子も自分を十分に大切にしたり信じることができなかったのだろうか。その子は東京から出て行くことになり、特に詳細を知るわけではないが、「東京め」という気持ちになった。器用では無く、どこかしら歪みがあるし解けない絡み方をしているかもだけど、いつだって正しいよ。

そういうひとを含めてぼくには今目の前に救える人間はいないので、自分に目を向けるしかない、というのもある。これでもかというくらい夢中になるひとがいればそのひとだけ考えて生きていけて楽そう。

いくらアニメを観ても酒を飲んでも快楽が積み重なるだけで全く進んでる感じがしない。なんか意識高くなってきた。けど、Facebookにポエムを投稿するほどの強者にはなりたくないものです。快楽得るものはだいたい揃って不自由が少ないのだけど肝心なものの手に入れ方が霞む感じがする。

 

以上、また書きます。

 

 

 

 

 

帰る場所っぽいのがあった

これは発見だ。

離れて、戻って、初めてわかる。

実に普通だ。

 

生きてきた場所に特に思い入れは無く、よく知ってはいる、って具合だったけど、

いざ帰ると足を運ぶ場所があり、お土産を渡したい人がいる。

 

実家でもよく知っているご飯が出て、

よく知っている風呂に入った。ドアノブがまだ修理されていなかった。

飲んで寝て、メシ食って寝て。

3日程度の帰省では驚くほど快楽ばかりだった。

思ったところに思った人がいた。

 

これはぼくにとって本当に鮮烈で、すごい方程式を発見したような気分になった。

ぼくは地元で傷つき、苦しみ悶え、たまの享楽に勤しみ、アッサリと上京した。

上京自体は手段なのだけど、目的にもなっていて。

結局地元には居場所が無いや、と思って出てきたのにいざ帰ってみるとこれかと。

たまにの帰郷だからというのはわかっているけれど、どうしてこんなに苦味が無いのか。

垢だらけのこの町でなぜこんなに安心できるのか。故郷は不思議だ。

 

帰り際にすごく寂しいような辛いような気持ちになり、ぼくの所在が殆ど無くなった。

父は再雇用で仕事に出ていて、母は年に2回ある友達との誕生日パーティー。

兄は一足先に東京へ帰ってそっちでフットサルの練習があるらしい。

ぼくは1人、まだ自分の部屋の場所で惰眠を続けていた。

丁度都会が焼けていく夢だったので続きを見ようと必死だった。

東京ではベッドだけど実家では布団なので身体がビキビキして痛かった。

半年も経っていないのに身体はすぐ慣れてしまうようで。

そういえば水も最初は合わなかったけど肌荒れは収まったし。

上京する直前までやってたバイトを辞める際に同僚がくれた色紙が部屋にあり、

ふと目を通した。

そこにはそれとなく褒めそやされてるぼくがおり、当時の充足感を思い出した。

バイトは楽しかったのだ。一生懸命やったし甲斐もあった。

学び多い系即感動即シェア人間なんかはこういうことで初心に帰るのだろう。

ぼくは、ウワッ今は嫌なことやってんな、てかこの頃のぼく文字上で慕われてんな、

今んとこ東京で必要としてくれるひといないぞ、オッ辛い、みたいな感じ。

自ら火傷してヒリヒリした。

実家を出る前、入念に忘れ物が無いかチェックした。

一度靴を履いたのに脱いで戻るってのを二回した。

忘れ物は見つからず、きれいにぼくが持ち出せたようだった。

 

自分のやりたいことのために東京に出てきたものの、

自分のために何かをしてあげるのが心底苦手であって、

マジでなんでここに居るのかわかんないんだけどとりあえずまだ死ぬってほどじゃない。

というか生きる意味が無いくらいじゃ死ねない。

 

 

 

以上、インターネット上に公開される日記です。

 

 

 

上京して3ヶ月が過ぎました。

3月26日に上京した。

沢山のひとで賑わった井の頭公園のカップルホイホイ橋を抜け、

立地はいいが外見がボロい家賃6万円のアパートに入った。

入り口に「御自由にお取り下さい」と聖教新聞が3部置いてあるアパート。

家具を組み立てるのに手の皮剥いて、しばらくダンボールがテーブルで。

2回金縛りにあった。1回ゴキブリが出た。まだ1回も遅刻はしてない。

 

自室にSoftBankの電波が無かった。小型基地局を頼んだらすぐ持ってきてくれた。

よくわからないが全然電波が改善しなかった。紙をいっぱい見ていっぱい試した。

電源抜き挿ししたり角度変えたりランプの点滅が終わるまで15分立ちっぱなしで待ったりした。点滅は終わらなかった。

仕事の昼休みに電話をしたら、故障してるみたいなのでもう1機送ります、と言われた。

そいつでアッサリ改善した。不良品は引き取られていった。

ぼくは今でも連れていかれた方に愛着がある。

 

会社は思ったよりよく研修をしてくれた。1社目なのであくまでイメージとの差。

「俺はユニクロをブラック企業だとは思いません」と研修担当の先輩が

ぼくの日報への返信で諭した。触れることができなかった。

その先輩はプロ意識についてアツく語り、「毎朝来る掃除のおばちゃんもプロであることに変わりはない。あの人らが来る時間を見てみ?毎回キッチリ9時だから。」と言った次の日おばちゃんは9時15分に来た。

 

上司は週明けほぼ必ず「週末何してたの?」と聞いてくる。

ぼくは最初の1ヶ月くらいずっと「家具組み立ててました」としか言えなかった。

話が繋がらない雰囲気にマズイと思い、咄嗟に「楽天のことどう思います?」って

聞いてしまい余計マズイ雰囲気になった。

 

最初の出勤が雨で、ぼくが座ってる目の前に立ってるお姉さんが

傘から落ちる水滴を余すこと無くぼくの左膝に落とした。

東京の満員電車は辛いよ、と以前から言われていたことを膝で理解した。

 

ある土曜日。家事をして買い物をして、夜USTでmograを流した。

ひだまりスケッチの曲が流れたので立ち上がり拳を突き上げ激しく暴れた。

このあたりから、日常系アニメに強く依存していること、

他人に勢いよく魅力を語ることに恥じらいを感じなくなった。

「ほんとに日常で、リアルな女の子の雰囲気で、愛が溢れているんだ。」

そんなことを言うと「それ別にリアルじゃないでしょ」と呆気無く指摘され

ただぼくが愛を欲してるだけで技巧的なところはただの繕いだと気づいた。

 

トイレが詰まった。月曜の朝に用を足したらまんまと詰まった。

色々策を講じたんだけど自力では直らず業者を呼んだ。

6万円取られた。

大家がボラレたねの一言などで追い打ちをかけてきたので感情のスイッチを切った。

やり方とかダメなところはすごくあったのだけど、一瞬で大家の顔が利根川に見えた。

お金だけで繋がってるひとは情など持ってくれないのだ。

そんな気持ちを抱いてしまった。

この一件以降クラシアンにリマーケティングされててぼくはいい気味なのだ。

 

祖母はいつも「強くならなあかんで。でも強いだけじゃダメや。優しくならなあかん」

とぼくに言ってきかした。

なのに東京は、強くはなれても優しくなれそうにない。

みんながみんな、自分以外の一切が他人でそこには何の関係もない。

そう信じ込もうとしているように見える。もしくは単に無関心。

仕事でもすっごい頻度で嘘をつく。腹の探り合いだ。

勝たなきゃいけないのだけど。ご飯食べなきゃいけないのだけど。

優しくする(機会を見つける)のがなかなか大変だ。

いざ優しくしても拒絶されたりして。

人間的魅力に乏しいので優しさ辺りで挽回するしかないのに。

 

 

 

 

以上、インターネットに報告です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくがバーで泣いてまたエモさこじらせた話。

 

バイト先の近くに、よく上司に連れて行ってもらったバーがある。最近は連れて行ってもらうことも少なくなって、たまに1人で訪れる程度。結構たまに。バーとか大人ぶったこと言ってるけどバーなんてそこしか行ったこと無いし値段も安い唯一1人で行ける飲み屋さん。その日もフラッと立ち寄ってビールを飲んでた。よく知った常連さんと話をしたりしながら。その時は全く涙を流すことになるなんて思ってなかった。

 

なんでか去年別れた恋人の話を掘られたんだよなぁ。そこからおかしくなった。ちなみに彼女のことはマスターも知っていて、いじられるって感じだったと思う。お酒が少々深くなってなんかあんまりひとに言ってなかったことも話してしまって。その内容を書こうと思うんだけどまた泣いたらヤですね。書きます。

 

ぼくは現在就活中です。2回目の。1回目の時に内定はもらってたけどクソクズッてたあまり留年してしまったというやつ。実は彼女と別れた原因もそれで。

彼女は1つ年上で、彼女がまだ大学生だった時から付き合ってた。彼女は綺麗で、本当に素敵なひとだった。ぼくより早く働き始めた彼女は1年目こそ泣きベソかいてたものの、すぐに自分の誇れる居場所を手に入れた。最初は契約社員だったけど、3年目には本採用されることとなった。その間ぼくはクズのつけを払いながら、自分や家族と折り合いをつけつつ2回目の就活を始めた。ただ彼女とはその折り合いというものがつけれていなくて。ぼくは受けてる業界上、東京行きが濃厚。でも彼女は地元で居場所を得ている。

要は、ついてはいけない、とのこと。要は、早いとこぼくに甲斐性があれば、ということ。お互いの摺り合わない不安定な未来を可能性ごと失くし、違う素敵であろう未来に生きましょうってこと。フラれた。これが去年。

そこからぼくは気を紛らわせようとデートめいたことをしたこともあったけど、彼女の完全性を逆に思い知らされ、彼女の匂いを思い出すなどして。未練タラタラ垂れ流し。就職も決まらない。前と変わらず小物。惨めとはぼくです。阿鼻叫喚です。

 

 

ここまでは前置き。泣かずに書けました。

マスターと常連さんに話した内容は次に書くやつ。

 

そうやってダラダラした失意の中、就活をしてた。夜行バスに乗り東京へ行って、説明会やらなんやらを受けて、また夜行バスで大阪に帰ってくる。何回も繰り返し今は慣れたそのサイクルを今日も終えようとしてた時、最寄り駅で彼女に会った。

正確にはこちらが発見しただけなんだけど。別れてからずっと会いたかった、何か理由をつけて会いたいけど自分の情況が許さず会えなかった彼女がいた。出勤途中の彼女が。彼女の家とぼくの家の最寄り駅は同じだったから顔を合わすのは想像できたんだけど、本当に出くわしたらどうしようなんて考えてなかった。内定とれたら連絡しようとは漠然と思っていたけど。彼女は最後に会った時より髪をほんの少し短く切っていた。ぼくは夜行バス帰りでボサボサの頭。シワの入った服。不恰好な大きめの荷物。内定はゼロ。こんな状態で声をかけれると思う?「やあ、久しぶり」って?何一つ誇れるものを手にしてないのに?フラレたくせに?

ぼくは少し立ち止まって彼女を見ていた、と思う。2秒くらい。彼女は気づかないでいてくれた。帰ってからも、少し時間が経っても、心の揺れは収まらず、自己憐憫がオラオラしてた。今の自分がこういう状態なのもダサいし、それを含めてまだ彼女のことをズルズル引きずってる自分の精神性が心底ダサいと思った。ダサいのも含めて自分だし実際思ってるんだからまあしょうがないんじゃないかなー、とかちょっとメタに思ったりしてたこともクッソダサルララ宇宙の風になると思った。ダサさコンプしてた。

 

 

ってことをお酒飲みながら話してるうちに込み上げてきちゃって。うっすら涙目になってきた時に、「泣いてもええんやで」ってマスターと常連さんに言われホロホロと涙を流し始めた。

そしたら常連さんが自分で煽っておきながら「そういう感情の発露大好き、たまらん」と言ってくださったのである。常連さんの気持ちはよくわかる。ぼくもインターネットで様々なひとの感情を止める堰が決壊したのを見てすごく楽しんでいるので。エモさ、すごく好きなので。その後、ミュージシャンである常連さんはぼくのために1曲即興で弾き語りをしてくれた。コード4つだけ。内容もシンプル。「過去に生きるな今を生きろ」と唄ってくれた。泣きながら吸ったことないタバコをもらって吸った。美味しくない。

後から思ったんだけど、これって長らくタバコ止めてたひとが感情高まって1本だけ昔を懐かしんで吸うってパターンであって、初めてタバコ吸うぼくがやることじゃない。でもそんな小っ恥ずかしいことも起きるなんともセンチメンタルな夜、素晴らしかった。

 

 

そういえば、他のひとは感情の高まりをどこに投げているのだろう。ぼくは内にずっと置いてたものが今回バーという酒飲み場で不意に出たけども。それ以前はインターネットに不恰好なフォームで連投してた。このブログに書くのもそのうちのひとつだけど、前はもっとできてたんだよ。別に肩壊した訳じゃなくて、就活のせいか、リアルな知り合いが増えて恥ずかしさが大きくなったのかあまりできてない。

うーん…

 

全ッッ然ッよくないな!!!!!

感情の端くれでもなんでも情報が溢れたほうがインターネットには良いのに!!!!!!!

ぼくはそれを楽しんでいたし依り所にしていたはずなのに!!!!!!!!

アニマス一気観してアイドルになるとか妄言垂れてる場合じゃナイ!!!!!!!!!!

 

 

ソーシャルメディアに振り回されて、使えば使うほど空気は固まってく。

顔を出せば出すほど、写真を撮れば撮るほど、言葉を重ねれば重ねるほど自分が規定されていく。それで逃げたくなってサブアカや鍵アカを作っていく。

みんな匿名でいいからさ、適当なアイコンでいいからさ、インターネットはしようよ。感情を投げようよ。ぼくから親友のいないみなさんへのお願いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インターネットはクズのエモ語りを助長する。

 

ぼくの妄想メモです。

妄想好きです。寝る前とか、退屈な午後とか。

幸せになる妄想をしましょう。逆に寝れなくなるくらいの。

ぼくの最近使ってるお気に入りの妄想を書きます。

 

 

【同居】

ぼくにはなぜだかわからないけど女の子の同居人がいる。彼女は以前やっていたバイトの後輩(といっても歳は同じ)だった。どうにも上手く思い出せないというかあんまり重要じゃないので省略するけど、とにかく珍しいことに女の子とルームシェアしてる。よく「男女一緒に住んでて何も無いってことはないだろ」と言われるけどほんとに何も無い。別にぼくが草食系ということを差し引いても、不思議とそういう関係にならなかった。2人の中でそうなってしまったらお互い生活しにくいというのがわかっていたし。

それにしても彼女とはすごく仲が良い。バイトが同じだった時から好きな音楽が一緒だったり小さい頃川が好きだったことが一緒だったり、なにかと馬が合う。家事サボってたら怒ってくれるところなんかも怠惰なぼくには合ってたみたい。とは言ってもよく知りだしたのは同居してからなんだけど。部屋は別々、だけどよく居間で一緒にお酒を飲んだりした。酔っ払った彼女は、ぼくが辞めた後のバイトの話をいっぱいする。記憶には無いけどぼくが彼女に冷たかったエピソードなんかを聞かされる。そんで眠たいね、そうだね、ってなって解散、就寝。大体こんな感じ。

今日はぼくがいつもより酔っ払ってる。新しいバイトがちょっと大変でその愚痴をこぼしたり。彼女はうんうんって聞いてくれる。それでどうでもよくなってきて、勢いで甘えたふりをして彼女に膝枕してもらおうとする。怒られるかなと思ったけど彼女はむしろ頭撫でてくれるという。ゆっくり身体を起こしながら彼女の顔に近づいて唇近づけようとしたら彼女は「えっ…」って言って。ぼくはそれを塞ぐようにキスをして、たぶん10秒くらい。彼女がスッと離れたから我に返って「ごめん…」と謝ったら、「ううん、大丈夫。私はじつぞんのこと好きだからいいんだけど、じつぞんは酔った勢いとかならやめといたほうがいいんじゃないかなって…」と彼女。ぼくは驚いて「えっ…?えっと…ぼくのこと…好きなの?」と無粋な返し。「う…うん…」と彼女。ぼくは「いつから?」とまたも無粋な返し。そしたら「バイトの…とき…」とすんごく小さい声の彼女。そのへんからもうすんごい愛おしくなってぎゅーってする。「ごめんね気づいてなくて。改めて考えてみるとぼくもすごい好きだよー」と調子いい事言ってそのまま同居から同棲へ。

 

 

 

以上です。よかったら使って下さい。

次回は「家庭教師先の女子高生に告白されるけど紳士的に断る」妄想でも書きます。

 

 

 

 

 

 

ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー死にたァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

インターネットはテスト前日の妄想を助長する。

 

 

 

Twitterやってくれたら月10万あげるよ。

   

ノイズや人間の量が多いだけの街で彼女は見つかった。

「あの、すみません。ちょっとお話を聞いていただきたいのですが。」

名刺を片手に、フォーマルな装い、歳はおそらく20代後半で髪は短髪、

いわゆる“キャッチ”らしい格好とは少し違った誠実そうな印象の男が話し掛けた。

 

スマートフォンに視線を落ち着け、集中してるフリをして何も集中していない。

いつものスタイルで彼女は無視を決め込んだ。

 

Twitterをしていただく代わりに10万円お支払いします」

 

地方から上京した大学生である彼女は、普段から無意識に溜まっている貧困にガッと足を掴まれ歩を止める。

 

 

 

 

“お仕事”はとても単純であった。

 

 

『鍵垢(非公開アカウント)で、毎日継続的にツイートすること。報酬は月10万円』

 

 

 

ちょろい。チョロイ。勝った。謎の勝利感すらある。と彼女は思った。 

でもさすがに怪しすぎるので、目的や商売のシステムについて尋ねると、

「あなたにアイドルになってほしいんです。そのための投資と思ってください。」

ますますよくわからなくなったのだが、目先の利益に目が眩み、彼女はその仕事を受けることにした。

実家からの仕送りも早々に使い潰してしまったし、と。

アイドル、なれるならなりたいし、と。

 

 

それからは、事務所(?)とのやり取りはメールのみになった。

彼女はメールに記載されているIDとパスワードでアカウントにログイン。

プロフィールにも指定があったため、彼女の自由になるのはアイコン画像のみ。ただし自撮り本人画像限定。

もともと自意識の高い彼女は、撮り溜めた自撮り画像群の中からひとつをチョイスしてアイコンにした。

そうこうしてるうちに事務所からもう1通メールが来た。その内容を要約すると以下のようになる。

 

『数時間ごと(不定期)に来るメールにしたがって、フォロー承認・ブロック・リプ・ふぁぼを行うこと』

 

変な虫が寄り付かないように。などとアイドル事務所めいた文句とともにこの“ルール”が伝えられた。

 

「こんばんは(^O^)これからよろしくおねがいしますねっ☆彡」

 

1ツイート目。アイドルっぽいのかどうかはわからないが、彼女は上手く自意識の波に乗り、仕事をスタートさせた。

 

 

 

 

それから1か月間、大したこともなく仕事は続いた。

初めはリプやふぁぼの要請も少なく、日常を淡々と垂れ流すだけだったが、

次第に要請も増え、様々なフォロワーと交流するようになっていた。

この頃には彼女がもともと持っていたアカウントはほとんど更新されなくなってしまっている。

ちょうど1ヶ月の頃にはフォロワーも200を超えた。

 

そして、呆気無く遅滞なく、10万円が振り込まれた。

騙されることも視野に入れて、以前よりのバイトを継続させていた彼女は、

入金の日の夜にバイトを辞めることを店長に告げた。

 

 

バイトが無くなった彼女は暇ができ、その分Twitterに費やした。

ウケるツイートや写真の作り方。フォロワー増減との相関。

自分がフォローせずともドンドン増えるフォロワー。有名人、それこそアイドルになったかのような気分だった。

 

始めて3ヶ月を過ぎる頃にはフォロワーが2000人を超え、事務所からメールで送られてくる対応リストも膨大な件数となっていた。

 

 

 

 

 

事件当日は、蒸し暑い夏の夜だった。 

深夜2時頃、来客の予定など無いにも関わらず彼女の部屋のインターホンが鳴る。

嫌な予感がした、正確には変質者の類かと思った彼女は居留守を使うことにした。

 

この時に彼女は「なんか変なひときたこわい」とつぶやいている。

 

しかしインターホンは鳴り止まず、激しいノックとともに彼女のアカウント名を混ぜた怒声のような呼びかけが轟いた。

 

「いるんでしょ!?ねぇ!!!◯◯◯(アカウント名)ちゃん!!!」

 

興奮した男の声とノックが続く。

彼女は恐怖の中「たすけて」とツイートを残し、たくさんのフォロワーに警察に電話するように諭された。

 

そのツイートから1分も満たず、ゴンッ、と鈍い音が玄関から響き、その音と共に男の声もノックも無くなった。

 

恐る恐るドアスコープから外を覗きこむと、男性が倒れているように見えた。 

彼女は混乱していたものの、警察に電話をする理性はあった。手が酷く震えており、3桁ですら上手く押せなかったようだが。

 

 

10分後に警察が到着した時、玄関の男性は頭を鈍器で殴られ、既に死んでいる状態だった。

 

 

 

 

警察の調べによると、被害者男性は彼女のフォロワーで間違いなかった。

ただ、その“フォロワー”がいささか特殊なものなのだ。

 

その男性は、とある運営会社に金銭を支払い、彼女をフォローしていた。

また、同様に金銭を支払い、リプライなどを行なっていた。

運営会社は「会員制日常系アイドル」と謳い、そのようなサービスを会員向けに行なっていたのだ。

男性はその会員であり、彼女のフォロワー全てが会員であった。

彼女は日常を切り売りする形で、男性たちに興奮を与え、報酬を得ていたということになる。

 

 

今回の事件を考えるに、フォロワーがフォロワーを殺したことに間違いなさそうだ。

彼女を守ろうとしたのだろうか。真意は犯人が捕まるまではわからないところではあるが。

ただ、気になるのは「たすけて」からの犯行が早過ぎる。これには気づいている方も多いだろう。

 

駆けつけた、という時間ではない。居た、という時間でしかありえない。

 

また、もうひとつ気になることがあるのだが、警察が犯人を捕まえきれてない理由のひとつに、 「現場付近の不審者が多すぎる」ということがある。不審者は犯人1人ではなく複数居たようだ。

彼女にすごく近い所に、ストーカーが複数人おり、そのうちの1人が犯行をした。こういうことだろうか。

ちなみに彼女の部屋からは当然のように盗聴器が発見されている。

もちろん彼女はもうその家を出て、現在はTwitterの仕事も辞めている。今ではどこにいるか知る術もない。

 

 

 

 

 

これが私が今回取材した事件に関しての簡単な手記である。今後犯人が速やかに逮捕されること、似たようなことが起きないことを願う。

 

 

 また、ゆーこ ( @yuukoo00 )さん

 

取材のご協力をいただきたいので、ご覧になられましたらご連絡下さい。

 

 

 

 

2012年6月15日 はてなブログにて

 

 

※オールフィクションです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インターネットはあらぬ妄想を助長する。